---------- CONTENTS ---------- ・ ABSの働き ・ 前輪の横滑り・スリップ角 ・ ブレーキペダルの突き上げ ・ タイヤのスリップ率とグリップ力 ・ 内輪差の計算 ・ その他の姿勢制御システム ・ 人とアシストシステムの衝突 ・ 勝手にリンク |
ABS(Antilock Brake System)の働き |
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▲ ABS は車の“走る”“曲がる”“止まる”の三大機能の内の“曲がる”機能を確保するためのものです。 上のレーンを走行するABS付き車は、フルブレーキを掛けても舵が効くので障害物を回避できますが、 下のレーンを走行するABS無し車は、フルブレーキを掛けると舵が効かなくなってしまい障害物に衝突してしまいます。 ▲ 右カーブを走行中にフルブレーキを掛けた際の両車の挙動の違いです。 ABS無し車は舵が効かないのでコースアウトしてしまいます。 もし断崖の場合は転落してしまいます。 ▲ 舵が効く/効かないの理由をマンガでご説明します。 [A]ゴム角棒を指で押すと、押された方向へ動きます。 [B]ゴム球 を指で押すと、押された方向へ動きます。 [C]ゴム丸棒を指で押すと、回転面の方向へ動きます。 なぜこうなるかを下図に示します。 ▲ 動き易さの異方性。 [A]ゴム角棒の動き易さの異方性は有りません。 [B]ゴム球 の動き易さの異方性は有りません。 [C]ゴム丸棒の動き易さは、回転面方向へは動き易く、その他の方向へは動き難くなります。 従って回転面(進行方向)に斜めの力が加わっても、回転面方向へ動きます。 もしゴム丸棒が回転しなければ、[A]ゴム角棒と等価になってしまいます。 逆に言うと舵輪が回転しなければ曲がる力は発生しないということです。 ABSはタイヤがロックされた場合に、ブレーキの油圧を断続的に下げてブレーキ力を弱めてタイヤを回転させる機能です。 ▲ お決まりのベクトル図です。 加えられた力は軸方向の分力と回転面方向の分力へ 分解できます。 軸方向の分力は軸方向の摩擦抗力と相殺されて0になります。 結局回転面方向の分力が残るので、この方向へ転がります。 ▲ 実際には舵輪の横滑りが発生します。 軸方向の分力は、軸方向抗力(横グリップ)に完全に相殺されてしまうのではなく、 軸方向の分力が、軸方向抗力(横グリップ)を上回った分だけの力で、車体を横滑りさせます。 タイヤの回転面方向と実際タイヤが進む方向との角度をスリップ角と呼びます。 ▲ 軸方向の力が横グリップより勝るとタイヤが横滑りします。 横方向のグリップ力は路面の状況に依存します。 砂利などを踏むとグリップ力が大きく落ちます。 ▲ ABSが作動すると、ブレーキペダルの裏側をハンマーでガッガッガッと叩くような突き上げがあります。 これに驚いて踏力を弱めてはいけません。強く踏み続けます。 草原とか砂利面とかの滑りやすい路面で練習をして、この感触を事前に確認しておくことが肝要です。 ▲ タイヤのスリップ率とグリップ力の関係です。 ホンダ タイヤとドライビング part.3 の図を援用させていただきました。 スリップ率 20% 辺りが、タイヤの縦グリップ力が最大になることがわかります。 スリップ率 0% で、縦グリップ力が 0 になることがわかります。 横グリップ力は横スリップした時ではなく、縦スリップした時のプロットです。 ▲ タイヤのスリップ率です。 [A] 例えば、車体が 100Km/h で走行中にブレーキを掛けたときのタイヤの回転速度(接地面の線速度)が 80Km/h であるとすると、 スリップ率は20%になります。 車体速度 100Km/h で走行中にタイヤロックしてタイヤ回転速度が 0Km/h の場合は、スリップ率は 100% となります。 [B] 実際は、タイヤの接地面の線速度はゴムの弾性変形分だけ上昇します。(ブレーキを掛けた時) 従って、スリップ率は下がります。 ▲ 以上のことから急制動時の効果的なブレーキングは、 タイヤ接地面のスリップ率が20%になるようにブレーキをかけると、最大のグリップが得られるということです。 但し、スリップ率が20%辺りで縦グリップ力が最大という条件です。 ▲ スリップ率 vs グリップ力 測定装置の模式図です。 例えば、タイヤを 80Km で回転させて、アスファルト路面を 100Km で回転させて、 タイヤの制動力を測定することにより、スリップ率が 20% の時のタイヤのグリップ力を知ることができます。 タイヤ線速度と路面速度が等しいとスリップ率は 0% になり、制動力も 0 が測定されます。 結果、計算で求められるグリップ力も 0 になり、前記『ホンダ タイヤとドライビング part.3』図と一致します。 また、Magic Formula モデルの計算にもマッチします。 ▲ 前記『ホンダ タイヤとドライビング part.3』図を第V・W象限へ拡張した図です。 スリップ率が+の場合は、制動時の状況です。 スリップ率が−の場合は、加速時の状況です。 一寸待ってよ! スリップ率 0% で縦グリップ力が 0 になってしまっています。 ということは、 加速も減速もしない惰性走行時はスリップ率が 0% ですから、縦グリップ力も 0 ということでしょうか? 縦グリップ力が 0 ということは氷の上を走っていることと同じなんですが? どうにも釈然としません・・・・・。 Magic Formula モデルでは、 スリップ率が 0% では、縦グリップ力が 0 ではなく 制動力も加速力も 0 になるということです。← これで納得! 実際には、スリップ率が 0% でも、制動力も加速力も発生できます。 偏平ゴム底スニーカーを履いた人が、アスファルト道路をスリップすることなく歩行も停止もできます。 これらの力は前記『スリップ率 - グリップ力 測定装置』では測定できません。トルク計が必要になります。 ▲「ABS作動中はブレーキが効いていないので制動距離が延びる?」と心配するのは無用です。 ブレーキが完全にオフになるのではなく、寧ろスリップ率が20%辺りの方が制動力が増して制動距離が縮まります。 ▲ ホイールロックで制動距離が延びる例です。 タイヤ接地面が熱溶融するとグリップ力が急激に弱まり、制動距離が延びてしまいます。 タイヤの焦げた臭いを撒き散らす走り方をしてはいけません。後続車は大迷惑です。 図は GTR2 FIA GT Racing DEMO のスクリーンショットです。 ▲ 内輪差の計算です。 前輪軸の延長線と後輪軸の延長線との交点が旋回中心になります。 前輪も後輪も旋回円の接線方向へ進みます。 内輪差 = 前輪旋回半径 - 後輪旋回半径 で算出できます。 |
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その他の姿勢制御システム |
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▲ Brake Assist システムは、緊急ブレーキ時の踏力を補完して、最大ブレーキをかけて制動距離を短縮するシステムです。 ▲ TCS:Traction Control System (マツダ、ホンダ) TRC:トヨタ自動車の登録商標。 TCL:三菱自動車の登録商標。 TRS:Traction Control System。 駆動輪の空転をセンサーで検知して、エンジン出力制御と駆動輪のブレーキ制御により、 タイヤのグリップを確保するシステムです。 ▲ ESC:Electronic Stability Control VSC:Vehicle Stability Control (トヨタ) VDC:Vehicle Dynamics Control (日産、スバル) VSA:Vehicle Stability Assist (ホンダ) ASC:Active Stavility Control (三菱) 車両の横滑りをセンサーで検知して、エンジン出力制御と各輪のブレーキ制御により、 旋回時における姿勢を安定させるシステムです。 ESC装備車であるからといっても へ 100Km で進入してはいけません。 ▲ ESCのアシストで突然の障害物を安定姿勢で回避できます。 ▲ 各々の姿勢制御システムの関係です。 ABSは BrakeAssist に内包され、これは TCS に一部内包され、これは ESC に内包されます。
△印はメーカーによって対応/非対応。 ▲ 車体の挙動を検出するための加速度(横G・縦G)センサーと、三軸方向の回転センサーです。 ★ これって、狼の足の爪が一本づつ抜かれていくみたい。 爪が抜かれた足でどうやって走れと言うの・・・・・? “羊の皮を被った狼”でなくて、“羊”そのもの・・・! かっての日本坂グランプリとか多米峠グランプリでは、腕の差が・・・・・。 ■ アシストシステムは走行中にオールラウンドで作動するのではなく、予め想定された条件内でのみ作動するものです。 生命保険契約書みたいに極小文字で という但し書きがあります。 したがって“あのケースはクリアできたのに、ここではだめだーっ”という事態が発生することがあります。 |
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人とアシストシステムの衝突 |
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▲ 人とアシストシステムが衝突した例です。 (エアバスは wikipedia より援用) 飛行アシストシステムにより、コンピュータが計算した飛行コースを逸脱した場合は、 その逆の補正をかけて飛行コースを戻そうとします。 機首を下げようとして人が操縦桿を押せば押すほど、アシストシステムはジェットエンジン出力を増すとともに昇降舵を制御して 機首を上げようとします。 結果、失速して墜落してしまいました。これほどの上昇角(53度)では失速時にテールスライドしたことでしょう。 機体の飛行姿勢を把握していればこんなアシストにはならないんですが。水平儀の情報はどうしたんでしょう? wikipedia 中華航空 140便 エアバス 墜落事故 wikipedia チャイナエアライン 676便 エアバス 墜落事故 国土交通省 航空機のオートパイロットシステムに関する概要.pdf フランス製品は電気系統が弱いという伝統をここでも踏襲してしまいました。(昼からワインの飲み過ぎ) エアバス社は『人はミスを犯すが、コンピュータはミスを犯さない』と主張しますが、 そもそもコンピュータを造るのはミスを犯す人です。 『人はミスを犯す → コンピュータは人が造ったもの → コンピュータはミスを犯す』の三段論法の連鎖を断ち切る テクノロジーは有り得るのか? 従来技術の延長ではなく画期的発明を期待します。 ■ 将来、自動車に様々なアシストシステム(もっと複雑なステアリングアシストも)が搭載されるようになると、 人とアシストシステムとの衝突だけでなく、アシストシステムどうしの衝突も考えられます。 メーカーさん、くれぐれもバグの無いようにお願いします。ワインを飲みながらの仕事は止めましょう。 |
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勝手にリンク |
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▲ 花澤優和さんの「車のABSをゲームの NSX-R で解説してみた!」YouTube 動画。 ABS On/Off のブレーキング時の挙動の違いをご覧いただけます。 ▲ 拙筆「正統派 Drive Simulator BMW M3 Challenge」ドライブシミュレータです。 リアリズム設定画面でABSのOn/Offを設定できます。 rFactor を始めとして isiMotor シミュレータエンジンを搭載したソフトウェアは実車をリアルにシミュレートできます。 ・ 国土交通省 自動車アセスメント:安全装置の解説、ブレーキ性能試験結果、衝突安全性能試験結果 ・ 国土交通省 自動車のオートパイロットシステムに関する検討会 ・ ABSシステムの働きと効果 (自動車保険ガイド) ・ BOSCH 自動車の安全システム ・ Bridgestone タイヤに求められる「4大基本機能」 ・ MITSUBISHI クルマの学校0 ・ TDK テクノマガジン:第130回 進化を続ける自動車用ブレーキ ・ TOYOTA 電子制御システム ・ 国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第14 自動車用ブレーキ技術 .pdf 全74ページ ・ 速度に応じた、車の停止距離(空走距離 + 制動距離)をオンラインで計算します。(河原崎法律事務所) ・ ドライブシミュレータリンク集 ・『田中ミノルの勝手にドラテク講座』(敬称略) 元レーサーのドライブテクニック公開講座です。 ン十億円もかけて実戦で培ったテクですので、大変貴重です 【ドライビングスクール】 ・ トヨタ交通安全センター 交通安全プログラム (富士スピードウェイ) ・ ホンダ ゼロから学ぶ スポーツドライビング スクール (鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎ) ・ ホンダ ドライビング スクール (鈴鹿サーキット 交通教育センター ) ・ ホンダ ドライビング スクール (ツインリンクもてぎ) ・ マツダ ドライビング アカデミー マツダ車オーナー限定 ・ NISMO 大森ファクトリー ドライビング スキルアップ プログラム (袖ヶ浦、富士スピードウェイ、筑波サーキット) ・ 山野哲也 ハンドリング クラブ 軽自動車OK (ツインリンクもてぎ) ・ ポルシェ スポーツドライビング スクール (首都圏) ・ フェラーリ・ドライビング・エクスペリエンス (イタリア モン・トランブラン コース) ・ レゴランド キッヅ ドライビング スクール (ポートメッセ なごや) ・ 富山県警察 シルバー ドライビング スクール 65歳以上無料 (富山県内の自動車学校・運転研修センター) ・ JAF 運転技術講習会 セーフティトレーニング (各地) |